代表的な江戸伝統園芸植物
◆江戸の花菖蒲 ― 品種改良の始まり
ハナショウブは、日本に自生するノハナショウブという一種類の植物から改良された園芸植物であり、現在知られる品種は2,000種以上にも上ります。その園芸文化を大きく発展させたのが江戸時代です。
ハナショウブが本格的に品種改良され始めたのは江戸時代後期(1800年代)です。幕臣の松平左金吾定朝は、日本中の変異個体を収集・交配し、300以上の品種を作り出すとともに、その成果をまとめた貴重な資料『花菖培養録』を残しました。定朝は後に「菖翁」とも呼ばれています。
◆江戸の花菖蒲文化 ― 堀切の小高園と大流行
また、定朝の弟子が堀切村に栽培を伝えたことで、百姓の小高伊左衛門が日本初の花菖蒲園「小高園」を開園。
堀切は江戸有数の行楽地として大いに賑わい、ハナショウブは大流行しました。
◆近代から現代の花菖蒲 ― 系統の誕生と継承
さらに、定朝の系統から、室内観賞に適した「肥後系」、そして後の「伊勢系」が誕生し、品種の世界は広がりを見せます。
現代の水元公園などでは、江戸時代から受け継がれた品種を含む多種多様なハナショウブが観賞でき、江戸の情熱が今なお引き継がれています。
ハナショウブ
ハナショウブをみるときに、その花がどんな『花形』なのかを知っていると、それぞれの違いがわかって、より楽しめます。
花形(花容)の違い
ハナショウブには、三英花(外側の3枚の花弁〈外花被片〉が大きくなる)や六英花(内側の3枚〈内花被片〉も大きくなる)など、独特の花容表現があります。
配色の違い
ハナショウブは一種類から生まれたため、花色に大きな違いはありません。しかし、その分、微妙な色合いや模様の変化を楽しむことができます。
ハナショウブの系統
江戸・東京で育成・栽培された品種群を江戸系と呼び、特に江戸時代から戦前にかけて作出された品種群を江戸古花と呼んでいます。背が高く群生美が特徴で、平咲きの品種も多く、花菖蒲園での観賞に適しています。
江戸系品種の作出は戦後も続けられています。本来は江戸古花も含みますが、このサイトでは便宜的に江戸古花を除いた江戸系を「江戸系」としています。
江戸時代に熊本藩士が地元に持ち帰って育成された品種群を肥後系と呼んでいます。花が大型で豪華な印象があり、鉢植えにして室内鑑賞に適しています。
江戸時代に松坂地方で飼育された品種群で、花被が垂れ下がり、縮緬状のしわが入るものが多いのが特徴です。
1962(昭和37)年に山形県の長井市で自生しているのが発見された品種群で、野生のノハナショウブの趣を残しているものもあります。
水元公園で観賞できるハナショウブ
都内で唯一の水郷景観の広がる水元公園。はなしょうぶ園の前の小合溜は、享保年間(1716~35年)に徳川幕府八代将軍吉宗の命により江戸を洪水から守り、灌漑用水を確保するために造られたものです。
都内で最大規模の菖蒲田には、およそ100品種20万本のハナショウブが咲き、見事な景観を楽しめます。
ハナショウブには早生・中生・晩生の品種があり、例年5月下旬から6月中旬にかけて、次々と花が咲き継いでいくのが特徴で、期間を通して多彩な品種の花を楽しめます。
(※開花の進み具合は、その年の気候条件により前後することがあります。)


















