2025年11月
グランプリ決定!『ファイナル審査』を迎えた11月の庭と審査の様子
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」
最終的な結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡り審査が行われますが、ガーデンの施工から約1年が経過した今回は、最終回となる『ファイナル審査』です。審査日:2025年11月6日
審査員は以下の5名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、本木一彦(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)
事前に公表されているコンテスト審査基準
作品タイトル
◾️準グランプリ◾️
Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜
開花期を迎えていた植物
サルビア‘ミスティックスパイヤーブルー’、アガスターシェ‘モレロ’、アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’、 アネモネ・フペンシス‘パミナ’、ノコンギク‘夕映’、クジャクアスター‘紫八重’、ヘリオプシス‘ブリーティングハーツ’、カラミンサ、チョコレートコスモスほか
今回の庭づくりを振り返って
季節ごとの草丈・開花期・色彩の変化を踏まえつつ、視覚的な彩りと空間の広がりを備えた「庭の花束」を表現しました。限られた面積を鑑みて、小さな配植を丁寧に重ね、グラス類は緩やかに束ねることで、配植の繊細さを際立たせています。夏の開花量を抑える切り戻しを行い、植物の体力を温存させることで、秋まで開花期を延ばす工夫を実践。その結果アガスターシェ、ヘリオプシス、アネモネなどは再び蕾を上げ、秋の構成美においても重要な役割を果たしてくれました。また、子供から大人まで楽しめるように、目線の高さに配慮した多層的な花壇構成を目指しました。宿根草に柔らかな日陰を提供するバイオネストを中心に据えることで、植物の生育特性に応じた配置に多様性を生むことが出来たと考えています。その結果、ガーデン全体に奥行が生まれ、来園者の視線や動線を自然に誘導してくれる花壇構成が実現しました。
ガーデンにバイオネストがもたらした機能と可能性が、新たな気づきとなりました。管理作業で発生した植物残渣はすべてここに収めることができ、廃棄物の削減と土壌循環の促進に貢献。また、景観要素としても機能し、冬は構造物としての存在感を、春以降は宿根草を始めとする草花の背景として視覚的なアクセントを担ってくれました。ナチュラリスティックな場の質を高めると同時に、来園者の興味を引く造形として、ガーデンに物語性を添える存在となってくれたことは思わぬ発見の1つです。
年間を通しての最大の成果は、ガーデンを介して来園者のまわりで生まれる交流です。植物単体の美しさだけではなく、風景としての調和を大切にしながら「このガーデンがみんなの記憶の中で輝きますように!」と想いを込めて管理に取り組みました。
作品タイトル
◾️入賞◾️
Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜
開花期を迎えていた植物
シュウメイギク‘雪ウサギ’、ヘリオプシス‘ブリーティングハーツ’、ルエリア、アスター‘リトルカーロウ’、クジャクアスター、ケイトウ、青花フジバカマほか
今回の庭づくりを振り返って
来園者の興味を引く野菜類やオジギソウなど、みんなのガーデンというテーマに沿った独自のチョイスができました。なかでもオジギソウはとても吸引力があり、子どもだけでなく大人も足を止めて楽しんでもらえていたと思います。また、テーマカラーで分けたりガーデン内でも見所を点在させたりすることで、どの角度からでも楽しめるガーデンになりました。
自分たちで考案した、メンテナンス時の発生材を利用したサークルネストは、生き物の拠り所になるだけでなく季節感の演出にも一役買いました。シンボリックな姿ですが植物の邪魔をせず、ガーデンとも良くマッチしたと思います。一年という期間もあり、当初のアイデアの中にあった「たくさんの生きとし生けるものたち全てがやってきてくれる」、というところまで辿り着く事はできませんでしたが、今後も管理事業者によるメンテナンスが続いていくなかで、その姿に徐々に近づいていく事はできるだろうという手応えは感じることができました。
私達の住む世田谷の地の親しみある砧公園で、地域でつながった仲間たちとコンテストに挑戦し、ガーデンを作り上げ、管理しながら見守ることが出来ました。今後も地元を盛り立てたツールとして、このガーデンが区民の憩いの場になることを期待しています。ガーデンは人と植物だけではなく、人と人とのつながりを生み出すコンテンツ。メンテナンス中などに、来園者にガーデンの説明や見所、今後の楽しみなど、ガーデンの意図を直接伝えることの重要性に気づきました。
作品タイトル
◾️グランプリ◾️
Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」
開花期を迎えていた植物
アスター‘シロクジャク’、アスター・アンベラータス、アスター‘オクトーバースカイズ’、ガイラルディア‘グレープセンセーション’、シュウメイギク‘ハドスペンアバンダンス’、リアトリス・エレガンス、キヨスミシラヤマギク、アロニアほか
今回の庭づくりを振り返って
原生地で見られるような群落を意識し、季節──とくに春から初夏にかけて──の移ろいによって雰囲気が大きく変わるように植栽を構成しました。ネスト通路を挟んで各エリアがレイヤーをつくるよう工夫しており、立つ位置によって奥行きが生まれ、印象や見え方が変わったのではないかと思います。
テーマは「昆虫などの小さな生きもの」。そのため、越冬のための枝を敷いたり、春先にアブラムシがつきやすい“原種系チューリップ”を植えたりと、ガーデンの象徴となったテントウムシが早い時期から活動しやすい環境づくりを行いました。その結果、アブラムシなど特定の虫が過剰に増えることもなく、ガーデン全体の生態系をバランスよく保つことができたと感じています。
「バンカープランツ」の手法は予想以上に効果的で、初夏にアブラムシで真っ黒になるはずのヘメロカリスが、ほぼ無傷だったのには驚きました。今回もっとも食害が多かったのはマメコガネでしたが、コガネムシの幼虫に寄生するツチバチが多く飛来していたので、来年の変化が楽しみです。8月の時点で観察できた昆虫はおよそ120種類。ガーデンの存在が、砧公園の生態環境に少しでも寄与できたのではないかと感じています。
一年を通して華やかさを保ちながらローメンテナンスを目指すことは、やはり反比例の関係にあると実感しました。広大ではない1つのガーデンで“見どころ”とのバランスをとる難しさは、大きな学びになりました。
また、施工から約3年後に全体がよく馴染む景観になるよう意識してデザインしましたが、土壌改良(微生物・空気・水の流れを意識)を丁寧に行ったことで、一部の植物がまるで3年の風格をまとったかのように成長し、驚かされました。今後はその部分をさらに深めていけたらと思っています。
作品タイトル
◾️入賞◾️
KINUTA “One Health” Garden
開花期を迎えていた植物
アメジストセージ、ハギ、チェリーセージ、ハマギク、ブッドレアほか
今回の庭づくりを振り返って
子どもたちの遊び場であり、天気の良い日には老若男女が思い思いに過ごす場所。そんな“日常の延長にある公園”の中で、ガーデンを「眺める」「触れる」、時には「花や葉を持ち帰る」など、さまざまな行動を通して、人と人、生き物、植物、微生物が自然に交わる世界を表現したいと考えました。宿根草の花色や種類の配置、低木との高低差などを工夫することで、2つの花壇でありながら統一感と自然な広がりを両立した空間を表現することができました。それぞれの植物の特性を活かしながら、ナチュラルな景観を形成できたと感じています。また、「生き物との共生」をテーマの一つとして掲げ、普遍的なチョウやウグイスなどの小鳥だけでなく、オオセイボウといった珍しい昆虫も観察され、多くの来園者に楽しんでいただけました。
ガーデンは1年間を通してローメンテナンスで維持。刈り込みや枝の更新をしない剪定管理、季節ごとの補植をするのではなく、最初に植えた植物たちが育ちたいように育てました。
今回のコンテストに使用した原産地もバラバラで多種多様な植物たちは、限定的な植栽帯の中でコミュニティを作り生存競争をしています。昆虫や鳥などの生き物は上手くその空間にニッチを見つけて入り込みます。人はガーデンにより五感を刺激され、微生物を浴びることで、心身の本質的な健康を享受しています。この環境、ヒト、微生物の連関こそがOne Healthを体現しています。
さらに、イベントでの案内やメンテナンス、写真撮影などを通じて出会った方々には、「生態系のぬか床」といった取り組みも紹介し、微生物の世界にも関心を持っていただくことができました。私たちの目指す“One Health”の視点からガーデンを体感してもらえたのではないかと感じています。このメンバーで、“One Health”のガーデンを砧公園で提案できたことは、最大の成果だと思います。
作品タイトル
◾️審査員特別賞◾️
「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ
開花期を迎えていた植物
アネモネ・フペンシス‘パミナ’、カンナ‘ベンガルタイガー’、アスター‘ジンダイ’、アスクレピアス・チュベロサ、ルドベキア‘リトルヘンリー’、オキシペタラム・カエルレウム、ダリア‘ブラックナイト’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、サルビア・レウカンサ‘フェアピンク’ほか
今回の庭づくりを振り返って
この庭には、私自身にとっても初めての挑戦や試み、そして心からのメッセージをたくさん盛り込んでいます。単に「きれいで気持ちの良い場所」ではなく、「人に力や学び、芸術的な希望を与える場」を目指して、深い思索と実践を重ねた一年でした。ほかでは見られない多種多様で個性的な植物を組み合わせ、審査の時だけでなく常に美しい開花リレーを織り成し、絶え間なく、そして常に変化し続ける美しさを保つことができました。その風景の変化には、私が追い求めてきた“漸進的な生命の美”が宿っていました。世界中の植物を混沌と調和させながらも、日本の夏冬の気候を生き抜ける植物選び。オクラやミョウガ等どこか懐かしい日本の「民家の庭」の情景へとつながる—そんな新しい都市生態系を示す試みでもありました。
経験値やバックグラウンドの異なるボランティアの方々と心を一つにすることも難しい課題でしたが、皆が庭を心から愛し、活き活きと動いてくださる姿に何度も胸を打たれました。ボランティアの方々と互いをリスペクトし合いながら、人間も植物も共に成長していくこのプロセスは、気候変動により、個人でガーデンを作ることがますます難しくなる現代において、とても心優しく美しい行為でもあり、人と人を結ぶ社会的・コミュニティ的な意義においても大きな希望を与える取組みであると実感しました。
春、車イスでいらした方が、「私の庭を背景に写真を撮りたい」と車イスから立ち上がり歩いてくださったその時、植物と人との間に底知れないパワーが生まれているのを感じました。愛と思いやりをもって接すれば、植物にも人にも力が宿る。ガーデンは勝負ではない。庭を造る者の情熱や優しさ、心の美しさを映す鏡・器なのだと学びました。「あなたはその時ひとつの奇跡に気づくだろう。愛の報酬は愛であるということを」(リチャード・カールソン)



