2024年11月

グランプリ決定!『ファイナル審査』を迎えた11月の庭と審査の様子

年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」

5人のガーデナーが手掛ける日向と日陰の2つのガーデン。最終的な結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡り審査が行われますが、ガーデンの施工から約1年が経過した今回は、最終回となる『ファイナル審査』です。審査日:2024年11月7日。

審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長)

事前に公表されているコンテスト審査基準

公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。

「ファイナル審査」は、秋の見ごろの観賞性と年間の管理状況を見る審査。これまで行われた審査は、春の見ごろの観賞性を見る4月の「ショーアップ審査」と、梅雨を経て猛暑に向けて植栽と耐久性を見る7月の「サステナブル審査」の2回です。 今回は「ファイナル審査」を含めた全3回の結果を踏まえ、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられていたか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」、そして「今回のテーマ=武蔵野の“くさはら”、が表現されているか」などが総合的に審査され、最終的な評価として、グランプリ・準グランプリ・特別審査委員賞も決定しました。
※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。

エリアごとの様子

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JOURNAL GARDEN A

作品タイトル

■グランプリ■
Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜

【日向のエリア】
開花していた植物
ルドベキア ‘タカオ’、フロックス‘ブルーパラダイス’、清澄白山菊、サルビア‘ファイヤーセンセーション’
【日陰エリア】
開花していた植物
シュウメイギク
【今回の庭づくりを振り返って】
日向・日陰どちらの庭も、イメージ図に近い形で育ってくれたので、思い描いていたものから大幅に離れることなく庭づくりができたと思います。日向はグラス類が多めの植栽で、私なりに「華やかさのあるくさはら」をつくりました。切り戻しで花数や株の大きさを調整することで、開花リレーをほぼ途切れることなく続かせることができました。日陰の庭に関しては、アスチルベのシードヘッドがきれいに残ってくれたため、花がない時期でも見どころを提供でき、1年を通して比較的ローメンテナンスですみました。
リーフやグラスで魅せるガーデンに見応えを出してくれたのは、季節感を演出してくれた球根植物。春先のクロッカス、スイセンとバイモ、秋のタマスダレやコルチカムは花が少ない時期に彩りを与え、初夏のアイリス、夏のユリが華やぎを添えてくれました。
病気や読みの甘さから一部枯れ込んだ部分もありましたが、日向と日陰それぞれの環境を活かした美しい庭を提案できました。
【1年間を通して学んだこと】
庭をデザインして、それを見せるにあたり、セオリー(手前は低く、奥は高くなど)は大事だということを痛感しましたし、日当たりや周辺環境、微気象をもっと確認・計算したうえで植物を配置する必要があるということがよくわかりました。
コンテストということで、多めに苗を入れていたのですが、育てていくうえで各植物の適切な植栽密度を知ることができました。適切な植物を選び、配置し、メンテをするという当たり前のことが、きれいな庭の秘訣だと改めて思いました。また、土づくりや肥料の加減も生育に大きな影響があることも再認識しました。
植え付けから11月の審査まで、日向のガーデン、日陰のガーデンともに、ほぼ庭の外にゴミを出していません。ガーデン内で完結できるということを実感できたのは大きな収穫であり、続けていきたいと思います。次年度に改善したい点もたくさんあります。ぜひガーデンを残してもらい何らかの形で関わらせていただければと思います。
JOURNAL GARDEN B

作品タイトル

■入 賞■
花鳥風月 命巡る草はら

【日向のエリア】
開花していた植物
コレオプシス‘レッドシフト’、オミナエシ、アスター‘ジンダイ’、ルドベキア‘ゴールドスターム’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、ルレリア‘パープルシャワー’、ノコンギク‘夕映え’、ミューレンベルギア・カピラリス
【日陰エリア】
開花していた植物
ホトトギス‘江戸の花’、ホトトギス‘松風’、清澄白山菊、青花フジバカマ、ノコンギク‘夕映え’、ツワブキ、ヒヨドリバナ
【今回の庭づくりを振り返って】
宿根草と球根による「イエロー&ブルー」のカラーコンビネーションを様々なパターンで年間通して計画通り表現することができました。開花が少ない時期はあったものの、途切れることなく何かしらの開花が見られました。また、蜜源や食草を意図的に取り入れたので、スミレに産卵するツマグロヒョウモンの幼虫が日陰の庭の黒葉スミレに何匹もおり、秋には成虫が飛んでいたので、タイトル通り命を巡らせることができました。
想像以上に生育旺盛で、イメージと異なる姿になったりしましたが、切り戻しや間引きなどメンテナンスで何とかカバー。品種ごとに、切り戻しをタイミング良く行うことで倒伏させず、開花を保ちながら株姿をコントロールできました。ほとんどの植物が、株が消えずに残っています。酷暑の夏でしたが、何年も先まで植えっぱなしでこのまま継続維持でき、生きものの住処にもなる、ロングライフ・ローメンテな庭を提示できたと思います。
【1年間を通して学んだこと】
東京という場所で、様々な方に1年間見られ続けるという事は、大きなプレッシャーでもあり、とても貴重な経験でした。“枯れたら交換すればいい”という事が通用しない状況が、隅々まで1株1株と植物と向き合う大切な経験となりました。そして、限られた空間で奥行感を出すことの重要性を再認識し、植物の組み合わせに関しても、もっともっと芸術性を高めてゆく必要性も感じました。アワードに参加したからこそ、ガーデンデザイナーとして、タフになれた気がしますし、次のステージも見えてきました。東京パークガーデンアワードは、ガーデナーを成長させ、日本のガーデン文化や街の景色を変える高いポテンシャルをもったプロジェクトだと思います。
JOURNAL GARDEN C

作品タイトル

■準グランプリ■
草原は、やがて森へ還る。

【日向のエリア】
開花していた植物
アスター‘アポロ’、ガウラ‘クールブリーズ’、ガイラルディア‘グレープセンセーション’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、エキナセア‘ファタルアトラクション’、ノコンギク‘夕映え’、ハゴロモフジバカマ、白花フジバカマ、アオチカラシバ、メリニス‘サバンナ’
【日陰エリア】
開花していた植物
アガスターシェ‘ブラックアダー’、アスター‘アイデアル’、アスター‘リトルカーロウ’、ヒメケマンソウ、バーベナ‘・オフィシナリス‘ハンプトン’、ミズヒキ
【今回の庭づくりを振り返って】
土中での空気や水の流れ、微生物や菌類の活性化を考え、環境づくりに力を入れたので、想定外のこともありましたが、乾燥や高温等による枯損等もなく初期段階から順調に育ちました。
共通テーマ“武蔵野のくさはら”の私の解釈は、平地ではなく山を背景に広がりさまざまな草花が風に揺れる草原でしたが、今回、自分のタイトルからも関連づけて“武蔵野の森”とも解釈。優しくてノスタルジックで、ジブリ的な世界観をどこかに感じる景色をイメージしました。大小の起伏をつけることで奥行と立体感を出し、その環境に応じた適地適草(木)の配植をしたため、作為的に造られた感が少ない、連続性のあるナチュラルな風景を演出できました。日本在来種を要所に入れつつ多種多様なプランツを組み合わせ、植物たちのドラマティックな「競争」と「協奏」を表現しました。色彩や形重視のデザインプランティングというより、物語を感じる風景ガーデンとして見てほしいと思います。
【1年間を通して学んだこと】
東京パークガーデンアワードを通じ、第三者(審査員の方々やメディア、ガーデナー仲間等)に評価されることにより、自分自身の実力や感性・個性、技術的に足りない点等が客観的に知れたことは大きな発見でした。これは今後、自分がどこかでガーデンをデザインする際に、確実に役立つ経験になったと思います。また、一年間神代に足を運び、他の4名の入賞者と交流し、共に切磋琢磨する中、いろいろなアイデアや手法、見せ方、考え方などを見聞きし知ることができました。ぜひ自分でも試してみたいと思うことも多く、大変多くの気づきと学びがありました。これらは、アワードに挑戦していなければ知り得なかったことであり、ガーデン界に関わる様々な人との出逢いやたくさんの感動を含め、自分自身を一回りも二回りも成長させてくれた一年でした。東京パークガーデンアワードは、私の庭人生において間違いなく大事な分岐点になることと思います。一年間本当にどうもありがとうございました。
JOURNAL GARDEN D

作品タイトル

■入 賞■
feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~

【日向のエリア】
開花していた植物
ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’、アスター‘ジンダイ’、ダンギク、ソバ
【日陰エリア】
開花していた植物
シュウメイギク‘クイーンシャルロット’、ホスタ、ユーパトリウム‘チョコレート’
【今回の庭づくりを振り返って】
温暖化する都市環境に耐えられる在来種と、日本の草原・里山の雰囲気をもったポップな印象を与える植物を組み合わせました。春~初夏にかけてかわいらしかったガーデンが、夏~秋にかけてだんだん落ち着き詫びていくよう、四季を通して移ろうように計画しています。アスター‘ジンダイ’や麦・蕎麦などで地域らしさを出して、植物に興味のない方や子供たちにも興味を持って見てもらえました。
虫や蝶などの生き物を呼ぶことができ、ガーデン内に生態系が生まれました。その反面、食害にあった植物がありましたが、真夏前に花をつけている株を含め切り戻したことで、株が大きなダメージを受けず秋まで宿根草の見栄えを保つことができ、3番花まで咲く種類もありました。とくに日陰側では、低木を骨格にしてツワブキやシダなどのオーナメンタルな宿根草を用いたことで、葉の形や色の重なりを表現できた上に、ローメンテナンスな管理ですみました。
【1年間を通して学んだこと】
ガーデンの管理経験が少ないことがネックでしたが、先輩ガーデナーから各植物に合った剪定方法や、花を長く咲かせる管理方法を教えていただき、大変勉強になりました。他の入賞者の植物の生長も一緒にみることができたことで、同じ品種でも、環境や剪定の仕方の違いで背丈や花の咲き方が変わることを観察できたり、管理方法を聞くことができたりと、大きな学びとなりました。「宿根草=ありのままの植物のサイクルをみせる」というイメージを持っていましたが、シードヘッドを残すと、こぼれ種で翌年大変なことになる品種や、老化の原因になるタイミングなども知ることができました。見せるガーデンとして、管理をして風景を継続していく場合には、「適切な管理」が第一であることを学ぶことができました。今後、一般の方に見せるガーデンをつくるにあたって、自然の良さや大切さをもっと感じてもらえるような伝え方ができたらいいなと考えています。
JOURNAL GARDEN E

作品タイトル

■審査員特別賞■
武蔵野の“これから”の原風景

【日向のエリア】
開花していた植物
ハギ、カライトソウ、タムラソウ、シラヤマギク、ヒヨドリバナ
【日陰エリア】
開花していた植物
キバナノアキギリ、ヒヨドリバナ
【今回の庭づくりを振り返って】
武蔵野の“くさはら”の昔の風景を取り入れ、そこに思いを馳せることで、過去と未来をつなぐ新たな視点を提案しました。都市緑化では生物多様性を意識し、都の「在来種選定ガイドライン」に基づいた植栽が数多く計画されていますが、草原のような景観はあまり重視されていないのが現状です。私の理想は、風景の中で目立つ存在ではなく、背景として人々や生き物が共存できる空間を作ることと、それらに愛着を持ちともに語らう人々が増えること。今回、日本の野草の魅力を語る場を設けられたことは、ひとつの成果だと捉えています。
コンセプトを重視して初めて育てる植物を多数導入したため、配置や密度の調整が難しく、イメージ通りの景観を作ることができなかった場所も多くありましたが、メンテナンスは月1回と、計画通りにローメンテナンスで管理できました。
これからも東京の風景を模索し続けたいです。
【1年間を通して学んだこと】
学びは数多くありましたが、全体を通して「宿根草ガーデンは知識が命」であることを痛感しました。単なる“ロー(Low)メンテナンス”ではなく、“ノウ(Know)メンテナンス”の考え方が重要であり、各植物の特性、土壌環境、周囲との相性を深く理解する必要があります。配置や剪定の時期、相性の良い植物などを学び、奥深い世界の入口に立てたように感じています。
またわたしのプランはガーデンに限らず、常緑低木、常緑宿根草を増やすことで、より管理頻度の低い一般の公園緑地への応用が可能と考えています。東京の風景の中に、テーマである“武蔵野のくさはら”を展開する際にはぜひお声がけください。

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