2026年2月

夢の島公園でガーデン制作に挑む
5人のガーデンデザイナーの庭づくりにかける思い

夢の島公園で開催中のコンテストでは、個性あふれる気鋭のガーデンデザイナー5人が、それぞれの思いを込めてガーデンを制作しました。今回は、彼らがコンテストに参加した理由や、植物と向き合う仕事にかける思い、そしてガーデンの見どころや鑑賞ポイントについてご紹介します。作品に込められた背景を知ることで、ガーデンの楽しみ方はさらに広がるはず。ぜひ夢の島公園を訪れ、個性豊かな5人のガーデンを体感してみてください。

多様な植物に出会える!
5人のガーデンの舞台・夢の島公園

今回のコンテストの舞台となった夢の島公園には、一般的な公園とはひと味違う植物が数多く植えられています。その背景にあるのが、東京湾に面し、運河と水路に囲まれた人工島という立地です。塩害や強風への対策が必要だったことに加え、かつてゴミの埋め立て地だった場所のイメージを払拭したい、という目的もありました。こうした環境のもとで選ばれたのが、異国情緒あふれる植物たちです。なかでもひときわ目を引くのが、コンテストガーデンの背後で茂るユーカリの木々。ユーカリは、異国の植物がこの土地でどの程度成長するかを検証する実験的な目的で植えられたほか、都内の動物園で飼育されているコアラのためのエサとして、品種選びや葉の供給候補地としても活用されてきました。

ガーデンを鑑賞したあとは、ガラスのドームが目を引く
「夢の島熱帯植物館」へ、緑のシャワーを浴びに行こう!

コンテストガーデンの隣のエリアに見えるのは、キラキラと陽の光を反射する大きなガラスのドーム。ここは、約1,000種類もの熱帯植物がひしめく「夢の島熱帯植物館」です。宿根草とはひと味もふた味も異なる、熱帯植物の世界。力強く葉を広げる植物の生命力と甘く漂う花の香りで、驚くほどリラックスできます。ガーデン観賞を楽しんだあとは、ゆっくりと館内をめぐりながら、トロピカルムードに浸るのがおすすめです。

5つのガーデン、5つの思い

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JOURNAL GARDEN A

作品タイトル

花の巡り、風と大地の詩

松田 恵

Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由

尊敬するガーデン@服部牧場

私はマンション住まいで、自分のお庭を持っていません。自分の好きにデザインした庭を作ってみたくて、TPGAに挑戦し始めました。
また、公園という誰でも集える公共の場に、ガーデンという憩いの空間を生み出すことにも強く惹かれました。植物があるだけで、人が立ち止まり、会話が生まれ、心がふっとやわらぐ——そんな場を自分の手で形にしてみたいと思いました。
TPGAは、その思いを実際のデザインとして表現できる貴重な機会だと感じ、参加を決めました。

Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由

マンション植栽@モンヴィラージュ仙川

雹(ひょう)被害をきっかけに、マンションの仲間が始めた地域のゴミ拾い活動が、ガーデニングに触れる最初の一歩でした。活動の途中で気づいた、枯れていたツツジの代わりに、イベントで余った花を植えて世話をするようになったことが、植物との関わりを深めるきっかけとなりました。
ちょうどその頃、マンションで緑化クラブを立ち上げ、植栽管理日に一緒に作業するようになりました。そこで出会ったガーデナーさんが、植物との向き合い方を丁寧に教えてくださり、植物の世界に強く惹かれていきました。
「もっといろんな植物を知りたいなら」と庭仕事の現場を紹介していただいたことが大きな転機となり、植物に携わる仕事を始める決心につながりました。

Q3. 制作したガーデンで表していること、見て欲しいポイント

植栽工事@夢の島公園

風に応えるしなやかさと、根を張る力強さが共存し、自然との共鳴を体感できる場を目指しました。自然はたくましく、偉大です。できることは、植物を適切に選び、適切に見守ること。
東京湾に面した海岸沿いの波型2本(@1.2m×10m)のロングボーダーガーデンという条件のもと、耐乾性・塩耐性・耐暑性のある植物を自分なりに選びました。花壇全体に統一感を持たせつつ、単調にならないよう品種構成や配置に工夫を重ね、歩きながら変化を楽しめるようにしています。通年を通して自然に美しいガーデンであるよう細やかに整えていきますので、四季それぞれの表情を感じてください。
JOURNAL GARDEN B

作品タイトル

潮風に揺れるプレイフルガーデン
-Playful Garden Swaying in the Coastal Breeze-

MOTe. 茂木 大樹

Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由

庭は、誰かの意図によって始まりながら、ほどなく人の手を離れ、環境や時間の無意識に委ねられていくものだと思います。設計された秩序の内外から、予期しない振る舞いや関係性、余白が静かなざわめきとして立ち上がってくる。そのずれやノイズとの応答を、私たちは愛おしく感じるのではないでしょうか。TPGAは、庭を完成形として閉じるのではなく、育ち、使われ、変わっていく時間そのものに立ち会える場だと感じました。意識と自然のあいだに生じる揺らぎを、つぶさに愛で観察し、これからの空間づくりの糧にしたいと考え、参加しました。

Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由

建築と緑を等価に扱う設計事務所で実務を積みました。植物の扱いが空間の完成度を大きく左右する一方で、自身の理解が十分でないと感じる場面に何度も直面しました。そこで自宅の空地を試験庭とし、植え付けや剪定、季節ごとの変化を観察しながら、植物の性質や管理の感覚を体で学びました。教科書には載っていない経験や、図面だけでは捉えきれない草木の振る舞いに触れることで、建築と植栽を切り分けずに捉える視点が少しずつ育まれました。こうした実感を重ねる中で、自然や風景づくりへの愛着が深まり、それを生業にしたいと考えるようになりました。

Q3. 制作したガーデンで表していること、見て欲しいポイント

単体として完結する庭ではなく、周辺環境と関係を結ぶことで、公園全体に小さな発展や気づきを生む場所をイメージしました。島のシグニチャーであるユーカリ樹林を主役とする前景構成に、回遊ステップや草木による見え隠れを重ね、園内に不足がちな遊具的な体験性やヒューマンスケールの空間性を補完。熱帯・亜熱帯植生や豪州庭園との調和に配慮した樹種で園内の一施設として風景の連なりを意識しました。眺望の制約となりがちな前面ベンチや照明ポールも、視点場や景色のリズム要素として読み替え、人の行為で意味が広がる場所となることを意図しています。
JOURNAL GARDEN C

作品タイトル

Stewardship Garden: The Way

ぐりんぐりん 横田 拓伸

Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由

子供と一緒に庭づくり

僕がいつも実現している庭づくりは、植物が日常生活に深く根付いているスタイルのお庭です。TPGAの特徴の“宿根草の持続可能なガーデン”は、僕たちの目指す『庭と、新しい暮らし』の基礎となるテーマです。このコンテストを通じて、僕はより広く深く知識と経験を得ることができ、世界中の皆さんの“心豊かな暮らし”の実現に、より貢献できると思い参加させていただきました。また一つの作品を仲間と作り上げるということは、とても楽しい祭りごとであり、成長するチャンスでもあります。TPGAは未来の可能性を押し広げる貴重な時間になると信じています!

Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由

植物と子供とブランコ

『なぜ人に植物が必要なのか?』僕は知っているんです。“挑戦”それが僕の人生のキーワード。しかし若い頃はあきれられるぐらい無知で未熟でした。挑戦したことは全て失敗、自分が何をやったら良いのか分からなくなった、人生の迷子になったんです。その時、ほったらかしの観葉植物の存在に気付いたんです。なぜかとても癒やされ、心落ち着ける時間を与えてくれることを知ったんです。『ありがとう』植物に伝えた言葉は“感謝”でした。それから庭づくりという世界に飛び込み、世界を見て回った。そして今『何でもできる』そう思って今日まで挑戦を続けています!

Q3. 制作したガーデンで表していること、見て欲しいポイント

左/東京パークガーデンイメージ図  右/夢の島のコンテストガーデンに作った砂浜

僕のガーデンは『変化』がキーワードです。端っこは砂浜で、中心に向かって土壌は豊かになっていく。それは植物が生まれ枯れる、昆虫や動物が暮らし、土に還っていく。そういった自然の循環が影響している、そんなことを表現しています。それはまるで人の一生のようで、砂浜は柔らかい心を持った子供たち。それから色んな影響や経験を通じて、花や実を育てる子育て世代になり、最後は人生の全てを謳歌してきた成熟世代へと変化していく。ガーデンは四季によりどんどん変化していきます。皆さんの記憶に残る、キラッ! と輝く一瞬をお見逃しなく!
JOURNAL GARDEN D

作品タイトル

SurFIVE Garden

PICNIC garden design 河野 友香

Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由

夢の島のコンテストガーデンの作庭メンバーと記念の一枚

2023年に参加した代々木公園ガーデナー養成講座がきっかけです。ガーデンの歴史や社会的な意義、設計に向き合う姿勢など、多くの考え方と技術を学び、それらを自分なりにアウトプットしたいと考えて応募しました。今回の舞台となる夢の島公園はかつて廃棄物処理の島として生まれ、緑豊かな公園へと再生してきた歴史があります。都市と自然との関係を象徴するような場所で庭づくりに関われること、1年を通して植物と向き合えるこの貴重な機会に大きな魅力を感じています。

Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由

「横浜フラワー&ガーデンフェスティバル2025」のガーデン部門で受賞した作品(作品名『Little Gardener's Nest 小さなガーデナーの秘密基地』)。センス・オブ・ワンダーをコンセプトにしている。

1990年頃、NHKで放送されていたバーネット原作のアニメ『ひみつの花園』に夢中になったことが、植物の仕事に惹かれる原点です。自分の地面や庭を持ち、整えることで暮らしの質が高まり、その心地よさが周囲や街へと広がっていくことを実感してきました。身近な自然に触れる中で育まれるセンス・オブ・ワンダーの大切さを、仕事を通して次の世代にも伝えていきたいと考えています。屋号「PICNIC」には、外で過ごす喜びを日常に取り戻したいという想いを込めています。

Q3. 制作したガーデンで表していること、見て欲しいポイント

夢の島公園の花壇の制作で参考にした、ロンドンのガーデン

このガーデンで最も大切にしたのは、季節を通して全体のシルエットが崩れないことです。
雨や風で植物が倒れていると、見る人に残念な印象を与えてしまうため、倒れにくく生命力の強い植物を選び、植え付け時からしっかり根を張れるよう土づくりにも工夫を重ねました。夏の厳しい暑さの中でもサバイヴする植物のエネルギーと、個性的な葉の形と色鮮やかな花々が作る景色を楽しんでいただけたら嬉しいです。
JOURNAL GARDEN E

作品タイトル

「東京サバンナ・バイ・ザ・ベイ」 〜地の記憶と環境を翻訳する庭

本田ハビタットデザイン 本田 直也

Q1. 東京パークガーデンアワード(TPGA)に参加した理由

知人から紹介を受け、「宿根草」というテーマであれば、これまで自分が取り組んできた領域とも重なると感じ、応募しました。動物園デザインや生息環境の再構築に携わる中で、植物は常に重要な役割を担ってきました。TPGAは、そうした実践や思考を、都市のガーデンという場で試し、表現できる機会だと感じています。

Q2. 植物に携わる仕事に就くようになった理由

動物園デザインでは動物だけでなく、その背景となる生息地を空間として表現する必要があります。その中核にあるのが植物です。植物を単なる素材として扱うのではなく、性質や個性を理解する必要性を感じ、自らガーデンを開設し、実践を通して学び始めました。現在の植物との関わりは、その延長線上にあります。

Q3. 制作したガーデンで表していること、見て欲しいポイント

都市の果てにある過酷な埋立地に、洗練された都会的なサバンナを作ることをコンセプトとしました。オーナメンタルグラスによって生まれる構造と、その足元を支える繊細な小花たちが織りなす、静かで地味だけど、可憐でインパクトある風景を目指しています。近づくほどに、植物同士の関係性を感じてほしいです。

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