2019年4月27日
日本庭園内枯滝・州浜の景観が美しく蘇りました②技能伝承研修について
旧古河庭園では、日本庭園内心字池の枯滝・州浜の補修工事を約10年ぶりに行いました。
下に敷き詰めてある「ぐり石」と呼ばれる石をすべて撤去し、それらを新たに据え直し、
旧古河庭園の日本庭園における最重要景観である枯滝・州浜を同時に修景することで、これらの景観が一体的に見えるよう工夫を凝らしました。
「枯滝」部分の作業においては旧古河庭園だけでなく、浜離宮恩賜庭園、小石川後楽園、六義園、清澄庭園、殿ヶ谷戸庭園の庭師も集まり、次世代へ文化財とともにこの技術を保存・伝承していくという意味合いも込めて研修として行われました。
また、「州浜」部分については当園職員監督のもと、協力業者と同時に行いました。
ここではこれらの作業について説明いたします。
旧古河庭園の枯滝は、泥を被り雑草が繁茂し、石が埋まってしまうことで水の流れを感じることが出来なくなっていました。
これに「ぐり返し」という方法で枯滝・州浜の再生を試みました。
ぐり返し
①「ぐり石」と呼ばれる敷き詰められた石を撤去
②石の下の地面に堆積した土砂や樹木の根を撤去
③ぐり石をひとつひとつ洗浄し、元の石の色を出す
④ぐり石を「枯滝」「州浜」の水の動きを意識しながら敷き直す。
上記の作業を熟練職員の指導のもと若手職員を中心に2日間かけて行いました。
日本庭園を守り伝えるための「技」と「心」が伝承され、さらに景観も見違えるほど美しくなりました。
また、これと同時に設置してあった竹柵も撤去し、ロープ柵に変更。
竹柵で分断されていた景観が「枯滝から州浜への一体的な景観」になったことにより、『枯滝から流れ落ちた水が川になり、河口で広がりを見せ、ゆるやかに大海に注ぎ込む』という景色が蘇りました。
ぜひ旧古河庭園へいらっしゃった際にはバラ園の先にある日本庭園にも足を延ばし、この生まれ変わった枯滝から州浜への流れをご覧いただければと思います。
その①(作業前・作業後の様子等)はこちら。
ぐり返し前
土に埋もれ、石の並びもばらばら。
石で表現されていたはずの水の流れが消えてしまっています。
ぐり返し後
雑草の有無だけでなく、石の色も本来の色に戻り、作庭者の意図したものへと近づきました。
引きで見ると水の流れが表現されているのが分かります。
ひとつひとつぐり石を洗います
高圧洗浄機を使用してぐり石の土や汚れを除去します。
水の流れを意識しながら石を据え直していきます
丸みのある方を上にし、同じ大きさのものが偏って作為を感じさせないよう何度もその場から離れては見返し、自然に配置。
研修に携わった職員たち
多くの方が来園される「秋のバラフェスティバル」前に完了とし、洋風庭園が有名な旧古河庭園において日本庭園の魅力を再発見していただくこともできました。